私は警察小説を愛し過ぎている。

読む本と言えば警察小説一筋。推理小説とは違うという持論のもと、日々次なる警察小説を探し求めている。

ゲームマスター 国立署刑事課 晴山旭・悪夢の夏 – 沢村鐵

2017/2/15 読み始め

2017/2/18 読了

TOKAGEの続編を読みたかったのだが、本屋の在庫がなく、違うシリーズを。

沢村鐵の晴山旭シリーズの最新刊だ。

このシリーズは、沢村鐵の『クラン』シリーズの主人公である晴山旭の所轄時代を描いた作品らしいが、クランの中公文庫ではなく、祥伝社から。

これまたメジャー出版社ではないので、書店員さんに感謝!な出会いの本ですね。

クランシリーズは読んでいるので、その晴山旭の過去の話ということもあり、期待値は高め。

これを読み終わったら、『クラン』シリーズも読み直してみようと思う。

 

【読後感想】

珈琲館でモーニングを食べながら読み始め。沢村鐵らしい惹きつけ方で最初からグッと引き込まれていく。結局そのまま珈琲館で読破。ずいぶん長いことお邪魔してしまいました...

物語は、それぞれ登場人物の視点で描かれていく。それぞれが問題をかかえており、物語のはじめから、崩壊を予感させるような危うさを感じさせられる。移り変わる視点で断片的に書かれるストーリーということもあり、入口は若干の読み辛さを感じる部分はあったが、次第に不思議と頭の中には立体的な情景が浮かんでくるようになる。小説の魅力の一つだ。

ところどころ引用されるヒトラーニーチェの言葉や短歌も、段々洗脳されていくような、物語の世界から逃げられなくなるような感覚に陥り、ついつい手を止められなくなってしまった要因。(言葉の細部まではきちんと読まなかったが...)

とにかくみんな狂ってる。狂気の中に、純粋な部分があるかと思うと、それもまた狂気へと変わっていく。まともだと思っていたものが崩れていく。理解しがたいような犯罪者やネトウヨの頭の中を覗いているようなそんな気分になってくる。クランと同じく、現実では起こり得ないような事件展開だが、この狂気は現代の犯罪を映し出しているような気もしてくる、そんな妙な感覚にとらわれる。

作中の月の描写も読み手の気持ちをフワつかせる。

これ以上書くと、ネタバレになってしまうので避けたいが、この壮絶な状況が、クランの晴山旭の根底にあった。ということ。あり得ない狂気から抜けきらない晴山の人間味が、現実(日常)にひきもどされ、ハッとさせられる。

また、『クラン』シリーズに手を付けることにしよう。

  • 主人公の魅力     ★★☆☆
  • 事件の面白さ     ★★★☆☆
  • どんでん返し感  ★★★☆☆
  • スピード感         ★☆☆☆
  • バイオレンス     ☆☆☆☆
  • 読後感                ★★☆☆