私は警察小説を愛し過ぎている。

読む本と言えば警察小説一筋。推理小説とは違うという持論のもと、日々次なる警察小説を探し求めている。

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 – 今野敏

2017/2/9 読み始め

2017/2/14 読了


本屋さんの平積みコーナーにて発見。多分2時間ドラマでやってたやつだな、とピンと来て購入。朝日文庫ってあえて見に行かないし、他の文庫に比べてエリアも少ない。書店員さんの采配で出会えた感のある一冊。
今野敏ということもあり、読む前の期待感は高め。

 

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 (朝日文庫)

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 (朝日文庫)

 

 


【読後感想】
今野敏ということで期待感を持って読み進めたのだから、正直、途中から、この作品が今野敏のものであることを忘れていた。個人的な感想ではあるが、展開や視点が今野敏っぽくないのだ。
警察小説にありがちな、最初の読み始めがのめり込みにくいというのはどうしてもあって、読み進めに少々時間がかかってしまったというのはお決まりなパターン。
このTOKAGEは、警視庁のバイク部隊であるTOKAGEの隊長である涼子の後輩である『上野』、前線現場に詰めている特殊班の『和美』、遊軍新聞記者である『湯浅』の視点から語られる。
キャラクターとしての主人公は涼子なのだろうが、彼女の視点からは書かれない。それでいて、やはりヒロインは涼子なのだという書かれ方が秀逸。
トカゲ隊員である『上野』は、特殊班かつトカゲとしての訓練は受けているものの、実際の誘拐事件ははじめてという若者。
前線本部の『和美』も、交渉の中心人物でもなければベテランでもない。むしろ前線本部の特殊班の中では一番の若手で、特にこれといった目立つ役割がないところ。
もう一つの視点『湯浅』はベテランの社会部遊軍新聞記者。独自の視点でフリーに動いていく。この小説の中での唯一フリーに組織の意思とは違う方向に動く人物かもしれない。
警察小説の魅力として、警察官の捜査以外のプライベートや様々な角度からの葛藤が映し出される点にあると思うのだが、このTOKAGEにはそれがない。その中で、『湯浅』という人物のフリーさというのが、この物語に動きを出しているように思える重要な要素。
この物語は、ひので銀行の行員3名が誘拐されて身代金が要求されているという事件をベースに進んでいく。私自身銀行で仕事をしていることもあり、ついつい照らし合わせながら読んでしまった。
この手の警察小説で重要な役割を果たす"捜査を引っ掻き回す空気を読めない存在"として、今回の場合は、ひので銀行常務である飛島と捜査一課管理官の相馬が登場する。こういう、いわばわからず屋達が、物語を面白くする要素でもあることを忘れてはいけない。

前線本部においては、飛島の無責任な態度や責任のなすりつけ。その理不尽さを目の前にしても、動じずに自分の仕事をこなすベテラン捜査員の東海林。捜査本部においては、誘拐事件の素人であり、かつ肝の座らない無能な管理官である相馬に対し、特殊班係長である高部が応じる。

その静かな対立構造を見ているのもまた、上野であり和美なのだ。

銀行側の責任者として、頭取ではなく常務を配置したものまたリアルである。頭取では、ヒールにならないからだ。そのあたりも、よく練られているなと、読み終わってから感じた点。

実際のストーリーはというと、最後の展開が途中から見えてしまって、ワクワク感は低め。展開が分かった上でのどんでん返しをきたいしたがえ、今野敏的などんでん返しはこなかった。展開が見えてしまった読者にとっては、最後の方は、ページをめくる手が、ある種、早くなってしまったのではないだろうか。

作中描かれていた対立構造の収め方も、小気味よさは残らず、ちょっと燃焼不足は否めない。

そんなところからも、今野敏的ではない印象を受けたのかもしれない。

 

  • 主人公の魅力     ★★★☆☆
  • 事件の面白さ     ★☆☆☆☆
  • どんでん返し感  ★☆☆☆☆
  • スピード感         ★☆☆☆☆
  • バイオレンス     ☆☆☆☆☆
  • 読後感                ★★☆☆☆